抗がん剤AC療法の副作用 ④骨髄抑制・倦怠感
骨髄抑制による副作用
AC療法を始めるにあたり、病院から主な薬剤とその副作用について書かれた資料を頂いた。
副作用については個人差があると言いながらも、多種多様な症状がずらっと書かれていて、こんなに副作用があるのかと驚いた。
中でも抗がん剤の影響受けて、骨髄の機能が低下する(骨髄抑制)と言うものを初めて知った。
血液中には白血球や赤血球、血小板があり、これらは骨髄で作られているが、骨髄抑制によって体内の白血球の数が減少すると、体内に入った細菌や真菌(カビ)を退治する免疫力が低下し、感染が起こりやすくなる。化学療法を開始して約7日から14日後が最も減少する時期なので、この時期は特に感染予防が必要である。
また血小板が減少すると、血が止まりにくくなるため、擦り傷、切り傷などには注意が必要だ。意外と「歯磨きで歯茎を傷つけて血が止まらなかった」というケースも多いようだ。
資料によると、白血球に比べて赤血球の寿命は長いため、めまいや息切れなどの貧血が起こる事は稀だと書かれていた。
白血球の減少=感染症に注意
血小板の減少=出血に注意
私はまさにこの期間に、食中毒になった。同じものを食べていても、夫は全く無症状だったので、まさに免疫力低下によるものだった。
骨髄抑制と亢進
AC療法ではこのように骨髄抑制が働くが、抗がん剤投与の翌日から翌々日には、好中球の分化・増殖、機能を亢進させるジーラスタ皮下注射を打つ。
つまり、抑制しておきながら亢進させるという真逆のことを骨髄内で起こす。これが私にとって最も辛い副作用をもたらした。
AC療法から10日〜12日目頃、ジーラスタ皮下注射を打って8日〜10日目頃に症状は現れた。
脊髄から腰にかけて、ズドーンとした得体の知れない骨痛が感じられた。これまで経験したことがない痛みで、表現するのが難しいが、ゾワゾワとした不快な痛みが、背中から腰にかけて、重くのしかかってくるような感じだった。
立っていても、座っても、起きていても、寝ていても、骨痛で腰が重い。よく脊髄移植は辛いと聞くが、こんな痛みなのだろうか?と想像した。
AC療法1回目、2回目と同じ副作用が出たので、このあたりの日程には出かけたり、誰かと会う予定は入れないようにした。そして温めると少し痛みが和らいだので、ホカロンを腰と首の付け根付近に貼って、家でゆっくり寝て過ごした。
この辛さはずっと続くわけではなかったので、期間限定とあきらめて「引きこもり期間」とした。料理ももちろん堂々と手抜きにした。
倦怠感、疲労感、息切れ、心拍数増加
日常的に感じていた副作用は、倦怠感や疲労感、息切れ、心拍数増加だった。一言で表すならば、急に高齢者になったかのようだった。
これはAC療法1クール目の抗がん剤投与2日目から始まって、結局終えるまでずっとこの状態だった。
例えば、今まで何でもなかった坂道や階段を歩くと、数メートル登っただけで立ち止まって休まなければ辛い。心臓がバクバクして心拍数が急激に上がるのだ。信号が変わりそうになって横断歩道を走ると息が上がる。ちょっと出かけただけなのに、どっと疲れる。歩いたり、自転車に乗ったり、これまで普通にできていたことが、休み休みじゃないとできなくなってしまった。まるでおばあちゃんそのものだった。
疲れるのでよく昼寝をするようになった。
行動がゆっくりになった。手すりがあればつかまり、椅子があれば座った。
めまいや貧血は稀だと書かれていたが、感覚的には貧血に似たような症状も多かった。
ゆっくり行動していれば、息切れしたり心拍数が増加することはないので、「私はおばあちゃんになったのだ」と自分に言い聞かせて過ごした。