リンパ節と骨への転移
抗がん剤を終えて結果は最悪
今あるがんが縮小、又はそのまま維持されることを想像して半年間、抗がん剤治療を行ってみたが、結果は最悪だった。
PETで真っ赤に写し出された上半身の画像に愕然とした。局所再発した胸のがんは拡大し、縦隔リンパ節、鎖骨リンパ節、胸骨へと大幅に転移していた。
今後の方向性を決める
乳がんに実績のある抗がん剤を2種投与したが、医師によると実際に成果が上がるケースは3割の患者だと言う。
他にも実績のある抗がん剤はあるので、今後はそれらを順次投与していくと、当然のように言われた瞬間に、私は「それは違う」と感じた。
ロシアンルーレットのように、いつかは当たるかもしれない抗がん剤を、延々と続けることによって、どれだけ自分の身体はダメージを受け、より引きこもる生活を続けていくのか?細菌に対する耐性が落ち、更に抵抗力が落ちていくと、がんではないもの、例えばコロナなどで死ぬのではないか?
対処療法を続けて行っても、根本的な治癒には繋がらない。心の声がはっきりと聞こえた。
西洋医学から自然療法へ
根本的な治癒のためには、なぜがんになったのか?その原因としっかり向き合わなくてはならない。その原因を知った上でその原因を取り除いていくしか助かる道はないと感じた。
抗がん剤治療中に気をつけてたこと
抗がん剤治療中に気をつけていたことを振り返ってみると、この時期は2つのことを意識して過ごしていた。
①大量の薬を代謝、解毒するため肝臓に注意
②免疫力が低下するためあらゆる細菌に注意
①の肝臓への負荷をできるだけ軽くするためにしていたことを上げると、
・治療中は禁酒。
・水をたくさん飲む。
・お茶はドクダミ茶を飲む。
・レバー、アサリ、シジミを食べる。
②の免疫力低下で行っていたことを上げると
・治療中は刺身など生魚、生貝は食べない。
・激辛料理などで腸に負担をかけない。
・野菜など繊維食を多く食べる。
・ガーデニングなど土に注意する。
・傷、怪我、歯周病に注意する。
・人混み、病院に近づかない。
・血行を良くし、下半身を温める。
こんな感じだった。
加えて身体の変化を観察するために、「治療の記録」ノートを準備し、体重、体温、食事内容、尿や便の状態、睡眠、入浴、現れた症状などを毎日記録した。
体調が悪いと感じた時は、何を食べたか、便はどんな状態だったか、このノートで確認した。通院する場合にも、いつから症状が出たか、振り返って説明することができたので、記録しておくことはとても大切だと思った。
AC療法中の周期と注意点
AC療法での主な副作用は、ここまで書いた通りだったが、4クール行うと、それなりに自分のパターンがわかるようになった。
副作用には一定の周期があり、バイオリズムのように、調子の良い時期、注意したほうが良い時期というのがある。私の場合はこのような周期だった。
薬物代謝時期:1日〜9日頃
抗がん剤と経口薬を5日ほど摂取するので、代謝の為に大量に水を消費する時期。カチコロの便秘になる。出掛ける時にも水をこまめに飲む必要がある。
肝臓に負荷がかかるので、アルコール類は飲まない方がよいようだ。私は抗がん剤治療期間は結局ずっと禁酒した。
要注意期間: 7日〜14日頃
抵抗力、免疫力が落ちるのが、投与から7日〜14日頃で、このタイミングには何かしらが発生しやすい。
健康な状態であれば数日で回復するようなことであっても、AC療法中はこじらせたり、長引いたりするのだ。
1クール目は、この時期に歯肉炎で顔まで腫れて、腫れが引くまで4日かかった。
2〜3クール目は、注意して過ごしたので何事もなかった。
4クール目には食中毒になった。家でしゃぶしゃぶをして、生肉を箸でしゃぶしゃぶしたのがいけなかったようだ。丸3日、水ですら口に入れると吐くという辛さだった。
どちらにしてもこの辺りは、刺身や貝など生物を食べるのは基本的に避け、鉢植えなどの用土なども触れないようにして過ごした。コロナ禍もあるので、人混みにも近づかなかった。
引きこもり期間: 10日〜12日頃
特に10日〜12日頃は骨髄抑制によって骨痛があり、脊髄から腰にかけて痛くなるので、温めてゆっくり寝て過ごすのが良い時期だった。
人に会ったり出掛けたりせず、ゆっくり引きこもっているのが良かった。
絶好調期間:15日〜22日頃
少しずつ抗がん剤が抜けていき、比較的健康な状態へ回復していく時期。出掛けたり、人と会うのはこの辺りがベストだった。
こうして体調が回復したタイミングで、次の2クール目と続いて、また同じような周期を繰り返していく。
抗がん剤AC療法の副作用 ⑥脱毛
ナーバスになった脱毛
抗がん剤治療で1番辛い副作用は脱毛だと思う。
出家以外に女性が坊主頭になることはなかなかないから、メンタル的にかなりの勇気が必要だ。今はおしゃれなウィッグもたくさんあるので、ファッションのように楽しめれば良いが、日増しに頭髪が抜けていく時期には、やっぱりナーバスになるし、誰にも会いたくない気分になる。
私の場合、どのように脱毛したかをまとめてみる。まずは抗がん剤を始める前に、ショートカットにして準備し、AC療法1クール目スタートからの変化は以下のようだった。
脱毛の記録
8日目・・・頭皮の毛穴が全て開いたような違和感を感じた。
9日目・・・頭皮の毛穴が開ききって、頭皮の臭いが気になった。
14日目・・・軽く毛髪を引っ張ってみたら、引っかかる感じもなく、スルッと抜けて驚いた。毛根を見ると、黒く丸く小さくかった。健康な毛髪を引っ張って抜くと、毛根はふっくらしているので、不自然に弱った毛根だと思った。
シャンプーしてタオルドライすると、パラパラと抜けた。試しに下の方の毛を引っ張ってみたら、こちらもスルリと抜けた。
この辺りから、抜け毛対策で、家ではタオルキャップや不織布のキャップを被るようにした。
16日目・・・大量に毛髪が抜けて、全体の70%くらい抜けた感じだった。
この辺りから、外出時には帽子が必須になった。頭皮の毛穴がザワザワして、頭皮を触ると痛いような感じで、頭皮が敏感になった。
22日目・・・主な頭髪はほぼ抜け落ち、短いふわふわした産毛の新生毛だけが残った。相変わらず頭皮はピリピリ敏感だった。
3ヶ月半頃・・・眉毛とまつ毛がかなり減ってきたが、まだ化粧をするとごまかせるレベルだった。
4ヶ月頃・・・ムダ毛、鼻毛が無くなって、肌はツルツルすべすべになった。
汗が目に入ったり、ゴミも入りやすくなった。鼻水はすぐにティッシュで押さえないと、たらりと流れ出てしまう。まつ毛も鼻毛も無くなると地味に困った。
5ヶ月半頃・・・眉毛、まつ毛が全く無くなった。
ちょうど抗がん剤最終回投与。4クール×2がこのタイミングで終わった。
再生の記録
抗がん剤を終えると、1ヶ月で毛の再生が始まった。
1ヶ月頃・・・ツルツルすべすべだった肌に、ムダ毛と鼻毛が生え出した。
1ヶ月半頃・・・眉や頭が青々と見え始め、一斉に毛が生えてきた。
2ヶ月頃・・・眉毛、まつ毛がしっかり生え揃った。
4ヶ月半頃・・・ベリーショートだが、帽子なしでもかろうじて出かけられるレベルになった。
脱毛の時期を終えて
脱毛の時期を振り返って思うことは、見た目が変わってしまうと、なかなか明るい気持ちに持っていくことが難しかったということだ。
それでも気持ちを奮い立たせて、少しでもおしゃれして出かけたり、誰かと会ったりすることは大切だったと思う。
体調の浮き沈みも激しかったので、体調の良い時期に限定されるが、天気が良ければ外に出て太陽の光を浴びて、近所をウォーキングしたり、自然に触れることも大切だった。
コロナ禍ということもあって、人混みに出かけることはほぼなく、ウィッグを使うことは殆どなかった。代わりにコットンニットの帽子とスカーフのケア帽子の出番が多かった。
この時期の化粧や帽子などのおしゃれに関しては、また改めてまとめたいと思っている。
抗がん剤AC療法の副作用 ⑤ 静脈炎•皮膚障害
静脈炎と血管痛
初めてAC療法を行なって、真っ先に出た症状が静脈炎だった。
抗がん剤は末梢静脈と呼ばれる腕の静脈に、細いチューブ(カテーテル)を刺して、薬を点滴する。
手術をした方の腕の血管はもう使えないので、点滴できる腕は片方だけしかない。しかも血管がしっかり見えていて、ルートが取りやすそうな静脈は1本だった。だから医師はそこに針を刺し、AC療法1クール目の点滴がスタートした。
“赤い悪魔”という異名があるアドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩) が投与されると、ガンのある部位にズキズキとした痛みを感じた。
次にシクロフォスファミド(エンドキサン)が投与されると、指先がピリピリし、むくむような感じがした。
そして点滴から7日後、血管が変色している事に気がついた。腕内側の静脈は青く見えるが、点滴を刺した箇所から10cmくらいが茶色いのだ。その後その変色部位は固くなっていき、腕を広げたり捻ったり、動かす度にひきつれのような血管痛が続いた。
同じ血管は使えなくなった
AC療法2クール目。血管の状態を見た医師は、この血管はもう使えないと言った。今後はホットタオルを腕に当てて、血管を拡張させてから点滴を行うことになった。
温めてから腕を叩いて血管を探す。より細くて見えにくい静脈に針を刺すのは、結構技術が必要そうだ。
静脈炎はどれくらいで回復するのか、看護師に聞いてみたが、個人差があると明確な回答はなかった。
血管の内側にかさぶたができているようなものなので、かさぶたで血管が細くなってしまっているから、もう使えないのだと言う。
点滴は手術した方の腕は使えず、はっきり見える静脈も静脈炎で使えないなら、あとは微かに見える細い静脈1本だけだということ。
まだ2クール目だから、今後6回は同じ血管を使わなくてはいけないということなのか。
[ 頑張れ血管!]自分の身体にエールを送った。
皮膚はプラスのことも
皮膚障害とは、手足症候群とも呼ばれる手足の皮膚がガザガザになったり、ひび割れたり、爪が薄くなったり、変色したり、壊死したり、様々な症状が出るらしい。
私の場合は、まず最初に嬉しい変化があった。投与1クール目の2日目に、突然乾癬が治ったのだ。
原因不明の乾癬は、もう6年くらいの付き合いで、副腎皮質ホルモンを塗ると治まるが、すぐにぶり返してなかなか完治しない状態が続いていた。それが、何事もなかったかのようなきれいな皮膚になってしまったから驚いた。
最終的に抗がん剤治療を終えた今でも再発していないので、6年引きずっていた乾癬とはきっぱりと縁が切れた。
手足症候群でガサガサに
投与1クール目の8日目に突然手足がざわざわして、急に敏感になった。手の甲がガサガサにけばだった感じになり、足裏もガサガサしてきた。日を追うごとに甲は割れたようになり、手のひらや足裏は油分が無くなって急激にシワシワになった。
いつもここまでひどく乾燥したことがない部位だったので、かなり違和感があった。入浴するだけでしみる感じだったので、ユースキンや馬油を塗ってしのいだ。
足の爪は壊死して剥がれた
同じく1クール8日目に、足の爪に痛みを感じた。特に親指の爪母が痛みが強かった。2クール目14日目になって、足の左右3本ずつ、親指、人差し指、中指の爪が真っ赤になった。20日目には赤くなった爪が浮き上がってくるような痛みを感じた。このタイミングで足の爪6本だけ伸びてないことに気がついた。
その後6本は黒く変色し、何もせず、自然に任せていたが、最初の投与から6ヶ月半後に順に浮き上がって剥がれた。きちんと下には新しい爪が生えてきているので、時間はかかるが素通りになれると思う。
抗がん剤AC療法の副作用 ④骨髄抑制・倦怠感
骨髄抑制による副作用
AC療法を始めるにあたり、病院から主な薬剤とその副作用について書かれた資料を頂いた。
副作用については個人差があると言いながらも、多種多様な症状がずらっと書かれていて、こんなに副作用があるのかと驚いた。
中でも抗がん剤の影響受けて、骨髄の機能が低下する(骨髄抑制)と言うものを初めて知った。
血液中には白血球や赤血球、血小板があり、これらは骨髄で作られているが、骨髄抑制によって体内の白血球の数が減少すると、体内に入った細菌や真菌(カビ)を退治する免疫力が低下し、感染が起こりやすくなる。化学療法を開始して約7日から14日後が最も減少する時期なので、この時期は特に感染予防が必要である。
また血小板が減少すると、血が止まりにくくなるため、擦り傷、切り傷などには注意が必要だ。意外と「歯磨きで歯茎を傷つけて血が止まらなかった」というケースも多いようだ。
資料によると、白血球に比べて赤血球の寿命は長いため、めまいや息切れなどの貧血が起こる事は稀だと書かれていた。
白血球の減少=感染症に注意
血小板の減少=出血に注意
私はまさにこの期間に、食中毒になった。同じものを食べていても、夫は全く無症状だったので、まさに免疫力低下によるものだった。
骨髄抑制と亢進
AC療法ではこのように骨髄抑制が働くが、抗がん剤投与の翌日から翌々日には、好中球の分化・増殖、機能を亢進させるジーラスタ皮下注射を打つ。
つまり、抑制しておきながら亢進させるという真逆のことを骨髄内で起こす。これが私にとって最も辛い副作用をもたらした。
AC療法から10日〜12日目頃、ジーラスタ皮下注射を打って8日〜10日目頃に症状は現れた。
脊髄から腰にかけて、ズドーンとした得体の知れない骨痛が感じられた。これまで経験したことがない痛みで、表現するのが難しいが、ゾワゾワとした不快な痛みが、背中から腰にかけて、重くのしかかってくるような感じだった。
立っていても、座っても、起きていても、寝ていても、骨痛で腰が重い。よく脊髄移植は辛いと聞くが、こんな痛みなのだろうか?と想像した。
AC療法1回目、2回目と同じ副作用が出たので、このあたりの日程には出かけたり、誰かと会う予定は入れないようにした。そして温めると少し痛みが和らいだので、ホカロンを腰と首の付け根付近に貼って、家でゆっくり寝て過ごした。
この辛さはずっと続くわけではなかったので、期間限定とあきらめて「引きこもり期間」とした。料理ももちろん堂々と手抜きにした。
倦怠感、疲労感、息切れ、心拍数増加
日常的に感じていた副作用は、倦怠感や疲労感、息切れ、心拍数増加だった。一言で表すならば、急に高齢者になったかのようだった。
これはAC療法1クール目の抗がん剤投与2日目から始まって、結局終えるまでずっとこの状態だった。
例えば、今まで何でもなかった坂道や階段を歩くと、数メートル登っただけで立ち止まって休まなければ辛い。心臓がバクバクして心拍数が急激に上がるのだ。信号が変わりそうになって横断歩道を走ると息が上がる。ちょっと出かけただけなのに、どっと疲れる。歩いたり、自転車に乗ったり、これまで普通にできていたことが、休み休みじゃないとできなくなってしまった。まるでおばあちゃんそのものだった。
疲れるのでよく昼寝をするようになった。
行動がゆっくりになった。手すりがあればつかまり、椅子があれば座った。
めまいや貧血は稀だと書かれていたが、感覚的には貧血に似たような症状も多かった。
ゆっくり行動していれば、息切れしたり心拍数が増加することはないので、「私はおばあちゃんになったのだ」と自分に言い聞かせて過ごした。
抗がん剤AC療法の副作用 ③便秘
腸は免疫を司る
抗がん剤治療は口、胃、腸といった消化器系の粘膜が最も刺激を受けやすいと言われている。口と胃に次いで、今日は腸について書きたい。
口から入った食べ物は胃で分解され、腸で消化、吸収、排泄される。
腸内には1000種、100兆個以上の細菌がすんでいて、この腸内細菌が酵素やホルモン、ビタミンを作り出している。免疫力の70%が腸でつくられるが、この菌が多種多様であるほど、善玉菌として活躍し、病原菌やウイルスから守ってくれている。
抗生物質は免疫力を低下させる
ところが、抗生物質を摂取すると、腸内の悪玉菌だけでなく、善玉菌も殺してしまう。
AC療法のA、アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩) は強力な抗がん性抗生物質だ。
だから、AC療法を行うと、腸内は様々な菌が殺されてしまい、免疫力を急激に低下させてしまう。ちなみに免疫力を高める残り30%は、心なのだそうだ。
抗がん剤治療が始まると、どうしてもメンタル的に落ち込むことが多くなってしまうので、腸内の免疫力も、心も免疫力が低下して、根こそぎ免疫力を奪われてしまうということだ。
異常に続く“カチコロ便”
AC療法が始まると、途端に便秘が始まる。食事の内容や量は投与前から変わっていないので、抗がん剤によって急速に腸が変わるのがわかった。
私は元々、毎日快便タイプだったが、AC療法1回目の時は、翌日から投与11日目まで、カチカチコロコロで、うさぎのフンのようになった。それでも毎日排便できたが、元々便秘の方の場合は少し大変かもしれない。2〜4回目と回を重ねていくうちに、投与から10日、9日、8日と1日ずつ“カチコロ期間”は短くなっていった。腸に耐性がついていくのかもしれない。
一定の“カチコロ期間”が過ぎると、何事もなかったように、今までの快便に戻った。自分のことながら、すごい回復力だと感心した。
喉の渇きと頻尿
薬剤師のアドバイスに従って、AC療法中はとにかく水を多く飲むようにしていた。
他にも「抗がん剤治療中はドクダミ茶が良い」という体験者の口コミを見て、水以外はドクダミ茶をポットに作り置きして、いつもどちらかを飲むようにしていた。
AC療法が始まると異常な喉の渇きがあり、家にいる時はこれらをこまめに飲んでいたが、お茶をいくら飲んでも便秘は改善はされず、代わりに頻尿になった。
今までは朝までぐっすり眠れる快眠タイプだったが、さすがにこれだけ水とお茶を飲むと、夜中にトイレに起きるようになった。喉は渇くし、薬の代謝には大量の水が必要だから、やむを得ないことだとは思うが、睡眠を阻害されて寝た気がしなかった。
ご高齢の方が、夜中に頻繁にトイレに起きる気持ちが少しだけ分かった気がした。